(1)ドル行って来いの展開
先週のドル円相場は、1ドル=120円台半ばで寄り付いた後、「イラクが国連査察団による米軍U2査察飛行応諾」等の報道が戦争回避の文脈で受け取られてドルは上昇、海外ファンド勢の損切りオーダーを巻き込みながら121.78円の週高値をつけた。
しかし、グリーンスパンFRB議長が議会証言において、
地政学リスクが米景気を下押ししている
ブッシュ政権の減税策の効果に懐疑的な見方を示した
ことからドルは反落に転じ、ビンラディン氏によるテロ再発懸念や、日本の国内総生産(GDP)が予想を上回ったこと等から上値重く推移した。
注目の国連査察団の追加報告は米英と独仏露中の対立を際立たせるものとなり、ドル円は週安値120.10円を付けた後、結局週初の水準120円半ばまで戻して越週している。
(2)まだら模様の米経済
最近の米経済指標は、ISM指数や鉱工業生産等、企業部門についてはやや明るさが見え始めたが、家計部門については失業率こそ大幅改善したものの、消費者信頼感や小売売上高は予想を下回る状況が続いており、米経済がまだら模様の状況にあることを示している。
グリーンスパン議長が指摘したように地政学リスクが企業・家計の経済活動を慎重にさせており、ブッシュ政権の減税策も今のところ市場心理を改善させるまでには至っておらず、市場では米景気回復時期は後ズレするとの見方が増えている。
現在はイラク情勢が国際政治のみならず米景気先行きをも左右する状況になっており、今週もイラク関連報道からは眼が離せない状況が続こう。
(3)ドル売り・ドル買い材料交錯
今週のドル円相場は保ち合いの展開を予想する。足元のイラク情勢を巡る米英と独仏露中の対立は、即時開戦回避との連想からドル買い材料視されており、特に対欧州通貨ではドル買い戻しのきっかけとなっている。
119円前半からは日本の通貨当局による介入警戒感が高まることや、米株市場が先週末に久々に上昇に転じたこともドル円を支える材料となりそうだ。
一方、121円台は200日移動平均線が走っているためテクニカルな抵抗帯となっており、日本の実需勢のドル売り注文も厚いため、一方的なドル上昇も見込み難い。イラク情勢への不透明感払拭まで、しばらくレンジ相場を形成するものと見たい。
(4)今週の予想レンジは118.50~121.50円 |